住宅選びのアドバイス

阪神大震災被災者 中田勘治郎さんのアドバイス

阪神淡路大震災被災者 中田勘治郎の「自分の命は自分で守る」
阪神淡路大震災被災者 中田勘治郎さん1995年1月17日午前5時46分
電車が急ブレーキで止まる時の放り出されるような激しい揺れです


 あの日・・・私は築47年からなる木造1階建ての母屋の方でいつもと同じようにベッドに寝ていました。すると突然、家が軋み(きしみ)始め、まるでガード下にいて、上を貨物列車が通ったようなそれほどすごい音がしました。「これはただごとではない!」「普通の地震ではない」と感じ、ベッドの前に置いてあった机の下に2,3秒後には潜り込んでいました。実は何かあったらこの机の下に入ろうと思って、予習をしていたんです。それで、とっさに体が動いたんだと思います。
 この大地震の揺れは、電車が急ブレーキをかけた止まった時、放り出されるようになりますが、まさにそんな揺れです。立つことも、歩くこともできません。地震が来たら、まず火元を止めろ、と言いますが、絶対無理です。そんな余裕はありません。

被災した母屋 幸いなことに、私が住んでいた家は2階建ではなかったことで倒壊を免れました。昔の人は「家を作るときは平屋だ」と非常に良いことを言っていました。関西から播州地区にかけては今でも平屋が多い。土地がないから2階、3階と造らざるを得ませんが、土地のあるところでは、平屋で建てるものだと、先代も平屋を建てていました。
そのお陰で、助かったのではないかと思います。私の家の周りは、大正時代に建った蔵や長屋もありましたが、これはわずか5秒で倒れたようです。
 さらに家の前に4棟16世帯の木造2階建てのアパートを持っていましたが、これがみなペシャンコになっていました。私のいとこ夫婦が門を出たところに住んでいましたが、家がつぶれ、夫婦ともに圧死で亡くなってしまいました。全国どこでもそうかもしれませんが、南の陽が当たる明るい部屋を座敷と称してお客様がめったに来ないのに空けておいて、自分たちは北側の湿った部屋を寝室として利用することが多いと思います。今回の地震は南から北にかけて何度も揺れましたから、北側に向けてすべてが倒れていたんです。いとこ夫婦もまさにそうで、北側で寝ていたから、家につぶされてしまいました。

母屋の家の中。壁が剥がれ落ちている  家の中の状況は、悲惨な状況でした。古い家ですから、壁は剥がれおちていますし、タンスやサイドボード、額縁など、いろんなものが飛んできて倒れている状態で、本当に足の踏み場が一歩もないという状況です。特に私の部屋にはピアノがあったんですが、これがキャリーで走り、ドアを塞いでしまうところまで来ていました。もちろん辺りは真っ暗で、何も見えません。手探りの中、揺れが収まってから、ようやく外に出ることができました。


地震に全く動じない家があった!

 阪神淡路大震災が起きる2年前、隣接する地に、息子夫婦に家を建ててやりました。住宅展示場に行くと、シャキーンと建ったいかにも災害に強そうな鉄筋コンクリート・パネル住宅(以下WPC住宅)が目に入ってきました。
 神戸というところは、まったく巨大地震が来るなんて想像もしたことがなく何の備えもなくその日を迎えたことは悔まれますが、巨大台風が来るのではないかと思い、この頑丈そうなWPC住宅を選んでいたのです。
 命辛々といった状態で玄関から出た時、けたたましい音がして余震が襲って来ました。屋根に残った瓦が、カランカランと音を立て落ちてきます。これを頭に受けたら大けがをしますので、再び家の中に入るわけです。屋根で音がしなくなって、ようやく外に出ることができました。

周りがすべて全半壊する中無傷のWPC住宅 そこで見た光景に、また驚かされました。私の家は傾いてボロボロ状態なのに、息子夫婦のWPC住宅はしゃんと立っている。「どういう家じゃろ、なんちゅう家じゃろ」と思いました。
 WPC住宅の方に行ってみますと、実に落ち着いた姿で立っています。ただ、余震が来て怖いもんですから、当時11か月の娘を抱いて嫁が外をうろうろするわけです。電線も垂れ下がっていますし、何が飛んでくるかわかりませんので、「この家やったら大丈夫や!」と、WPC住宅の中に入れて安心したことを思い出します。
 息子夫婦に聞いたら、もちろん土地が揺れますから、WPC住宅も揺れはしますが、木造住宅みたいに軋みませんし、コンコンコンって言うだけで、どっちかと言ったら静かなものだったようです。「そんな大きな地震あったん?」って感じで、それだけの違いが出るのにはびっくりでした。

 さらにこのWPC住宅には、最高25人が寝泊りを1週間行いました。避難所は悲惨ですし、この住宅なら安心だということで、皆が住み始めました。電気は止まっていますから暖房もありませんし、明かりもありません。各部屋に分かれ、雑魚寝状態でした。真冬で寝具もありません。冬だから当然寒いわけですが、それでも凌げたのは断熱性の高いWPC住宅だったからかもしれません。

 大災害に「復習」はありません。最悪を想定した「予習」をいかに積んでおくかが、非常に重要です。災害現場は非常に悲惨です。家具などは耐震金具などで止めておくことをお勧めしますし、額などは飾らないのがベストです。できることなら、地震に全く動じない家、潰れない家を購入ください。自分の命は自分で守る!これがすべてです。
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