災害への備え

災害への備え [火災への備え]

火災は家の内と外から起きる。両方に備え、命と生活を守ることが大事
火災の災害は、どのくらい起きているのだろうか?
義務化された住宅用火災報知機と、火災予防のポイント
住まいの耐火は、家が建つ地域と規模、用途で決められている
「延焼のおそれ」をよく理解しておくことが重要
規制エリア外であっても、「耐火建築物」を建てることの意味
「木は燃える」「鉄は燃えない」というのは誤解
火災の災害は、どのくらい起きているのだろうか?
 日本全国で、火災はどれくらいの頻度で起きており、どの程度の被害が出ているのでしょうか。消防庁によると、昨(2009)年1年間の総出火数は5万1,124件。1日あたりおよそ140件、10分ごとに1件の火災が発生したことになります。
 火災による負傷者数は7,615件。総死者数は1,877件。火災といっても車両火災や林野火災、船舶火災などもあって、このうち住宅火災だけを見ますと、死者数は1,025人。その前の年より98人(8.4%)減少しています。
 減ってはいるものの、決して安心できない要素が、死者数のうち「65歳以上のお年寄りが占める割合」で、なんと628人、6割を超えるのです。この先高齢化が進めば、悲惨な火災における死者が増えることも十分考えられます。
 出荷の原因は、放火・放火の疑いがトップで21.8%、こんろが10%、たばこが9.8%、たき火が5.9%、火遊びが3.8%、火入れ3.1%、ストーブ2.8%の順となっています。
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義務化された住宅用火災報知機と、火災予防のポイント
 近年の住宅火災による死者数の増加や、今後ますます進む高齢化に対して、2004年、「戸建てを含むすべての住宅を対象に住宅用火災報知器の設置を義務づける」という消防法の改正が行われました。はじめは新築住宅で設置が義務化され、既存住宅にも広まって、2011年6月までに新築・既存住宅を問わず全国で義務化されることになります。
 このように火災報知機が義務化された背景には、日本に先立ち義務化を進めた米国で、住宅火災による死者数が半減する実績があがっているためです。
 火災報知機による対策に加え、室内から「火を出さない」ためには、火元となるこんろやストーブ、たばこなど、室内の火の管理をしっかりすることが最も重要です。また住宅内に消火器を備え、使い方を確認し、ときどき点検を行うことも必要です。
 さらに電気製品は適正に使い、たこ足配線をしないこと、プラグやコンセントのまわりにホコリがたまらないよう掃除をすることも大事です。こどもにも火の用心を教えることはもちろん、家のまわりに燃えやすいものを置かず、清掃して美観を保つことも放火防止につながります。
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住まいの耐火は、家が建つ地域と規模、用途で決められている
 「火の用心」とは別に、もしも自分の家から出火したとき、あるいは近隣が火事になったとき、「火を燃え移らせない」「火をもらわない」という対策が非常に大事です。そのため、住まいの耐火については、地域や建物の規模、用途によって、厳密に法律で規制されています。
 まず、地域区分では、都市計画法により市街地の火災延焼を防ぐため、「防火地域」が定められています。主要な幹線道路沿いで商業施設や官公庁などが集まっているところが最も規制の厳しい「防火地域」。それよりも少し住宅密集度が低いところが「準防火地域」。「準防火地域」よりさらに住宅密集度が低いけれど、やはり防火規制があるのが「法22条区域」と呼ばれるところです。
 自分たちの住む地域で、どこがこれら防火規制に該当するエリアか、該当した建物にはどんな制限があるのかは、お住まいの自治体に聞くとくわしく教えてくれます。
 基本的に、「防火地域」では木造建築は原則禁止で、3階以上または延べ床面積100u以上の建物は「耐火建築物」に、それ以下の建物も「耐火建築物」か「準耐火建築物」にしなくてはなりません。
「準防火地域」では、4階以上または延べ床面積1500u以上の建物は「耐火建築物」に、それ以下の建物も「耐火建築物」か「準耐火建築物」にしなくてはなりません。「準防火地域」の場合、一定の基準をクリアすれば木造3階建ても可能です。2階建て以下は、防火制限はありませんが、外壁や延焼のおそれがある部分は、「防火構造」とすることが定められています。
 「法22条区域」とは、ちょっと変わった名称ですが、これは都市計画法ではなく建築基準法の22条で定められた制限のため、こうした呼び方をします。屋根を不燃性の材料でふくことや、外壁にも準防火性能が求められます。
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「延焼のおそれ」をよく理解しておくことが重要
 法律用語で使われている「耐火建築物」とは、鉄筋コンクリートや、鉄骨造を耐火材で覆って保護した建物で、いわゆる「燃えない」建築物です。「準耐火建築物」とは、「耐火建築物」より耐火性能は劣るものの、「準防火地域」で木造3階建てを建てられるほどの性能を持ちます。
 たとえば「準防火地域」で木造2階建てを建てる場合、防火制限はありませんが、外壁や軒裏の「延焼のおそれのある部分」は防火構造とすることが定められています。具体的には道路の中心線や隣地境界線から、1階は3m以下、2階は5m以下の部分が「延焼のおそれがある」とされ、外壁や軒裏を、防火構造および防火戸、防火ダンパー付き換気扇にしなくてはなりません。
 ここで注意してほしいのが、1階は境界から3m下がったところまでを防火構造に、2階は同じく5m下がったところまでを防火構造にしなさいとしている点です。火災になった場合、炎は上にいくほど燃え広がり、横方向に及ぶため、上方部ほど厚い規制がかけられているのです。
 「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」においても、外壁、軒裏をはじめドアや窓についての耐火性能(どのくらいの時間、火に耐えることができるか)を細かく定めています。さまざまな形で、「火を出さない」だけでなく、「燃え移らせない」「火をもらわない」ための対策が施されているのです。
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規制エリア外であっても、「耐火建築物」を建てることの意味
 こうした規制の話をすると、「では、防火地域の場合は鉄筋コンクリートにしなければならず、準防火地域なら木造でいいのですね」というふうにとらえる人がいますが、そう単純ではありません。実際、防火規制外のエリアでも、防火建築物を選んで建てている人はたくさんいます。法律は「最低限のライン」を示しているだけで、「火災への備え」にどの程度のレベルを選ぶかは、それぞれの人が決断する問題なのです。
 確かに、耐火建築物にすると、耐火性能の低い建築物よりもコストがかかります。しかし、単純に建てるときの「安い」「高い」という比較だけですまないことも、ぜひ覚えておいてください。
 たとえば極めて耐火性能の高い壁式コンクリートパネル造の住宅の場合、家全体はもちろん、各部屋がコンクリートパネルでさえぎられていますから、万が一自宅で出火した場合も、火元となる部屋から隣の部屋への延焼の可能性が極端に低くなります。近隣地域の火災からの「もらい火」の可能性も、同様に低くなります。
 火災に備えることの意味は大きく2つ。自分や家族の「命を守る」こと。そして忘れてならないのが、もし火災が起きたとしても、その後の「生活を守る」ことです。
 防火性能が高い「燃えない」家に住むということは、「命を守る」備えであるとともに、家財を守り、建て替えのリスクを軽減して、「生活を守る」ことにも直結します。建物の耐火性を考えるときは、建てるときの値段(イニシャルコスト)だけでなく、維持する値段(ランニングコスト)や、生涯にわたる出費(ライフサイクルコスト)も考え合わせ、もっとも合理的な答え(コストパフォーマンス)を探ることです。
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木は燃える」「鉄は燃えない」というのは誤解「
 コンクリートの家の例を挙げたところで、もう一つ、よく誤解されている「木の家は燃えるが、鉄の家は燃えない」ということについても、触れておきましょう。
 木は、確かに燃えやすい素材ではありますが、構造体に木を使うから(すなわち木造だから)火に弱いとはいえません。火は、酸素がないと燃えませんから、住宅火災の場合は、当然ながら外側から燃えていくことになります。外側から炭化しながらゆっくり燃えていくことになるので、家の強度もゆっくりと落ちていきます。急激に強度が落ちて、一瞬で倒壊するようなことにはなりにくいのです。つまり、落ち着いて逃げれば、逃げ出せるだけの時間はあることになります。
 それよりもこわいのが、家の内装や建具に使われる新建材で、燃えると有毒ガスが発生し、これを吸うことで逃げ遅れ、命を落とす人が少なくありません。また、新建材を多用していると火の手が上がりやすいため、燃えるスピードも速まってしまいます。木造住宅を建てる際は、構造体に太い柱を用いること、内装や建具も吟味して、燃えにくく、燃えても有毒ガスを発生しない素材を選ぶことが重要です。
 一方、鉄の家はどうでしょうか。鉄骨は、熱を加えると急激に強度が低下し、変形しやすくなります。米国で同時多発テロが起きた2001年9月11日、火災にあった世界貿易センタービルが崩落した映像を思い浮かべれば、鉄骨の家がもつ危険性がよくわかります。鉄筋コンクリートおよび、鉄骨造を耐火材で覆って保護した建物が「耐火建築物」だといいましたが、両者の強さには差があるということになります。

 火災への備えを考える時は、「木は燃えるが鉄は燃えない」といった単純な思い込みに陥らないで、住宅の素材や建て方の違い、地域の特性、自治体などの取り組みなど、さまざまな情報を求め、じっくり検討することです。住宅火災報知機の義務化のような新しい法改正もありますし、2007年には残念なことに耐火材の偽装事件もありました。「防火」とひと口に言っても、状況は少しずつ変わります。自分と家族の「命と生活」を守るため、今、何かできるのか――ぜひ、真剣に考えてみてください。
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