防災住宅研究所

コラム

<コラム20>コロナ禍の災害発生! どのような家でも在宅避難は可能なのか?

東日本大震災後の避難所は過密な状態だった

最近、「在宅避難」という言葉をよく聞く。9月に発生した台風10号は「大型で非常に強い」の過去最大級クラスの台風で「特別警報」が発表され、多くの被害が出るのではと懸念されたが、日本に接近した際には勢力が落ち、被害も少なくホッと胸をなでおろした方も少なくないはずである。
この台風接近で注目されたのが「コロナ禍の問題があり、避難所に逃げるべきか」という点だった。各自治体では避難所での人数制限や一人一人の間隔を十分にとるように指示するなどで対応したが、混乱を引き起こした避難所も少なくない。

ここで注目されたのが「在宅避難」である。在宅避難とは大規模な自然災害が発生したときに、行政より避難指示や避難勧告が出されても、あえて指定された避難所に避難することをせず、自宅にとどまる避難行動をとることを言う。
高層マンションが多い東京都港区では住民に「在宅避難」を薦めている。住民の人数に対して避難所で収容できる人数は少なく、すべての住民を収容しきれないのはどの地域も同様である。

では本題に入るが「どのような住宅でも在宅避難は可能か?」という問いに対して、「多くの住宅が在宅避難には不適格!」と答えたいと思う。
災害の種類によって避難の方法は異なるが、今回のように台風の場合はあらかじめ進路予測や規模もわかるため最も備えやすい。
下記の図は風速による被害度を表したものだが、平均風速40m/s以上になると、「木造住宅は倒壊」「鉄骨プレハブ住宅の壁が変形」とある。

(上図はhttps://www.sankei.com/images/news/200905/afr2009050014-p2.jpgより)
(上図はhttps://www.sankei.com/images/news/200905/afr2009050014-p2.jpgより)

私も多くの災害現場調査に赴いたが、上図のように風速40m/sを超えるような強風では多くの木造住宅が倒壊し、多くの鉄骨系住宅も屋根が吹き飛ばされたりしている。<防災アレコレ4>にも同等のことを書いたが、上記のような木造や鉄骨工法では、強風の前に耐えることができないのが現実である。購入時に住宅メーカーから「災害に強いから大丈夫です」と言われ安全だと勘違いしてはいないか。すなわち、「在宅避難」には不適格と言わざるを得ない。在宅避難をしたものの、強風によって全壊し、家族の命を失っては意味がない。
対台風や竜巻に関してだが、「在宅避難」が可能なのは鉄筋コンクリート造の建物であり、河川の氾濫や高潮の可能性がある地域では鉄筋コンクリート系の建物で3階以上がある、あるいは屋上避難が可能な建物である。
沖縄県内の住宅が巨大台風の通り道であるにもかかわらず、被害報道がほとんどないのは、9割以上の建物が鉄筋コンクリート造で建てられているからという理由がある。
台風が巨大化している昨今にあって、木造住宅や鉄骨系住宅では迫りくる風速50m/s近い巨大台風には耐えることができないのが現実だ。
災害は人間の想像をはるかに超える! 地震に強い住宅だからと思っていても、巨大台風にも耐えられると思ったら大間違いであることを知って欲しいと思う。

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