防災住宅研究所

コラム

<コラム19>梅雨前線豪雨災害! 避難指示レベル5「命を守る行動を取ってください」の指示に関し、報道各社が「頑丈そうな建物に避難してください」というが、「頑丈そうな建物」ってどんな建物?

大きな被害をもたらした熊本県球磨川

これまでにない連続降雨で、九州をはじめ各地に大きな爪痕を残している梅雨前線。岐阜県や長野県内でも河川の氾濫等によって住民が孤立し、愛知県豊橋市内では突風が発生し、住宅の屋根に損害が発生もしている。

避難指示レベルは各地で軒並み「4」以上は出されたが、新型コロナウイルス感染症の問題もあり、避難をためらう住人も少なくなかったようだ。
昨年3月に制定された「避難勧告等に関するガイドラインの改定」は以前にも書いたが指示内容が漠然としすぎで、判断に困る方も多いのではないかと思う。これは気象庁からの発表で別物だが「50年に1度の降水量が見込まれています。速やかに避難してください」というが、「50年に1度」が毎年のように発表されては信憑性がない。定義自体を見直さなければいけない時期に来ているのではないかと思う。

元に戻すが、ニュースを見ていると避難指示レベル5の出た地区の方に「すでに災害が発生している可能性もあります。命を守る行動を取ってください」のあとに今年から土砂災害危険区域の方には「頑丈そうな建物に避難してください。避難が難しい場合は自宅の2階以上、山とは反対側の部屋に移動して、少しでも命を守る行動を取ってください」というコメントを繰り返し言っていたと思う。

ここで聞きたいのだが「頑丈そうな建物」とはどのような建物なのか?
これは個人個人の解釈によって違ってくるのでないだろうか。

多くの住宅メーカーが近年「災害に強い」ことを売りにして宣伝している。それを鵜呑みにして購入している方も少なくないように思う。その建物が「頑丈だから大丈夫」と避難しなければ、「命の危険」が一気に高まってしまうのではないか。私が避難放送の原稿を書くのであれば「頑丈そうな建物」=「鉄筋コンクリート造の3階以上の建物に避難してください」と具体的に書く。河川の決壊によって水が一気に襲ってきたときなど、過去の災害現場を調査した限りでは、残念ながら木造住宅はもとより、鉄骨系住宅も損壊をしている。それが「頑丈だ」と信じ込み、「うちは鉄骨住宅で住宅メーカーも災害に強いと言っていたから大丈夫だ」と思ってしまうと非常に危険である。
また「避難勧告」が出されても、「避難所に行かない方が安全」という方もいる。鉄筋コンクリート造の3階以上の方にお住まいの方は、避難所までの経路、避難所の構造等を考えたときに「避難しない方が安全」のケースも少なくない。

私は常々、「あらゆる災害が襲ってきても全壊・半壊どころか一部損壊もなく、1週間分の備蓄、家族×3L×水、停電時における電源の確保、非常用電位配線、災害時用トイレ等が準備されている“防災住宅”」の必要性を訴えているが、新型コロナウイルス感染症の問題もあり「在宅避難」が推奨されている中で、「家」が損壊してしまっては意味がない。
巨大災害が襲ってきたとき、どのような行動を取るかは「自己判断」がきちんとできるよう日頃から真剣に「災害」と「家」の問題を考えておいて欲しいと思う。「この家から非難すべきか否や」。本当に安全な「我が家」とはどのようなものなのか、「新居」を考えられている方は是非、知って欲しいと願っている。

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