防災住宅研究所

コラム

<コラム21>長期優良住宅の認定、危険地域除外へ 次期通常国会で関連法改正案提出 温暖化で豪雨確率瀬戸内は3.3倍に!レッドゾーンなど不適合の場合も

「長期優良住宅」とは、大きく分けて以下A~Dの4つの措置が講じられている住宅を指す。
A.長期に使用するための構造及び設備を有していること
B.居住環境等への配慮を行っていること
C.一定面積以上の住戸面積を有していること
D.維持保全の期間、方法を定めていること

長期優良住宅(新築)の認定を受けた住宅は、補助金、住宅ローンの金利引き下げ、税の特例や地震保険料の割引等 を受けることができる。
長期優良住宅認定制度は平成21年6月4日より施行され、平成30年度末で累計100万戸 以上が認定を受け(実績数は新築と増 築・改築の合計) 、認定戸数は年間10万戸程度で推移しており、 新築される一戸建て住宅の約4戸に1戸は長期優良住宅の認定を取得している。
詳しくお知りになりたい方は、下記HPをご覧ください。
(一般社団法人 住宅性能評価・表示協会 https://www.hyoukakyoukai.or.jp/download/pdf/chouki_sin_2019.pdf

国土交通省によると、土砂災害や浸水、津波に恐れのある地域に建つ住宅は全世帯の23%存在。水害が多発している中、政府は安全な地域への移転促進を掲げていることから、災害リスクの高い地域での住宅建設を抑制することを狙い、長期優良住宅認定基準に立地条件を追加したい意向のよう。
この発表のわずか前に、気象庁気象研究所などの研究チームが、スーパーコンピューターを活用して過去30年で今の温暖化があった場合となかった場合とで比較。その結果、地球温暖化の影響によって、大きな被害をもたらした平成30年7月豪雨のような大雨が、瀬戸内地方では温暖化がない場合68年に一度のレベルから21年に一度のレベルにまで頻度が増加したと発表している。

平成30年7月豪雨による土砂災害によって多くの住宅が被害を受けた
平成30年7月豪雨による土砂災害によって多くの住宅が被害を受けた

2014年に広島土砂災害、平成30年7月豪雨による土砂災害地域を調査すると、豪雨によって発生した土砂災害を受け止めることができるのはコンクリート系の住宅のみで、住宅性能表示で耐震等級3を取得し、長期優良住宅の認定を受けていたとしても、木造住宅や鉄骨系住宅では受け止められないという事実があり、レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)などに住宅を建てる場合に規制をかけることは遅きに失した感さえある。

2014年広島土砂災害で2mもの土砂を受け止めたコンクリート系住宅
2014年広島土砂災害で2mもの土砂を受け止めたコンクリート系住宅

一方で、レッドゾーン等に建築の場合にはコンクリート系住宅のみとし、長期優良住宅の認定と同様に補助金、住宅ローンの金利引き下げ、税の特例や地震保険料の割引等 を受けることができる仕組みを作ってはどうかと提案したい。
日本で最も土砂災害危険区域等が約48,000か所と多い広島県などは、平地が少ないことから昭和40年代~50年代にかけて山々を削り、住宅団地を造ったという経緯があり、近年の豪雨・土砂災害で多くの命を落とす結果となっている。とはいえ、住宅地自体が今なお少なく高額なため、一戸建てを求める方たちは、「大丈夫だろう」と安易な気持ちで安さゆえに土砂災害危険区域等に建ててしまうこともあると聞く。そのような方たちにも、例え土砂災害が発生しても土砂を受け止めるコンクリート系住宅であれば、安全を担保でき、補助金が付けば買いやすさも加わり、過疎化が進む地域の歯止めにもなるのではないかと思う。
制限を設けるのも一つの方法だが、活かす方法もあることをもう少し考えてみてはどうかと思っている。

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