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<家を建てる人へ:その5>耐震基準、耐震等級の現実を知っていますか?

旧耐震基準は大規模な地震への規定なし

ご存じの方も多いと思いますが、日本の耐震基準の歴史からまず記してみましょう。
建築基準法の前身である市街地建築物法が施行されたのは1920年。大正9年のことです。この法律では建物の自重と積載荷重に対する構造強度の基準が定められていますが、耐震に関する基準は作られていませんでした。
この基準が定められた3年後、日本をまさに揺るがす出来事が発生したのです。1923年9月1日11時58分、神奈川県西部から房総半島南東沖を震源地とする大正関東地震が発生。マグニチュード7.9を記録し、死者は約105,400人(うち火災:約92000人、津波:325人、土砂災害:688人)。家屋損壊は約294,000戸(うち焼失家屋約212,400戸)。地震発生時がお昼時であったことから広い範囲で火災が発生。火災旋風が発生し、逃げ惑う住人を襲ったと言われています。
この一般的に言われる「関東大震災」を受けて、翌1924年に市街地建築物法が改定され、地震に関する基準が定められています。その内容は「許容応力度設計において、材料の安全率を3倍とし、地震力は水平震度0.1を要求」というものでした。

戦後となり、1950年11月23日に市街地建築物法は廃止され、建築基準法が施行されます。これは「旧耐震基準」と呼ばれるもので、「許容応力度設計において材料の安全率を3倍、地震力を水平震度0.2に引き上げた」という耐震基準があり、これは中程度の地震(震度5程度)で倒壊しないことが条件で、大規模な地震(震度6~7)に関して特に規定はありませんでした。
しかしその後、十勝沖地震(1968年)、宮城県沖地震(1978年)などで多くの住宅が損壊。基準の見直しへとつながっていたのです。

命が守られれば、我が家は壊れてもいいの?新耐震基準とは?

そして1981年6月1日に建築基準法が改正され、地震に対する厳しい基準が定められたのです。これを「新耐震基準」と呼んでいます。新耐震基準では、建物内の人命を守ることを重要視し、以下のように定義されています。

・建築物の存続期間中に数度遭遇すべき稀に発生する地震動に対してほとんど損傷が生ずるおそれのないこと。
・建築物の存在期間中に一度は遭遇することを考慮すべき極めて稀に発生する地震動に対して倒壊・崩壊するおそれのないこと。

わかりやすく解説をすると
・震度5程度の中程度の地震:建物の軽微なひび割れに留める。
・震度6~7の大規模地震:倒壊しない。

すなわち、「住宅は損壊してもいいので、住人の命は守ろう」というものなのです。
さて、皆さん。ここで質問です。この新耐震基準の対地震強度を聞いて「なるほど」と思われましたか、それとも「えっ、その程度?」と思われたでしょうか。新耐震基準と言え、襲い来る地震に対し「命さえ守ってくれたら、我が家は壊れてもいい」と規定しているのです。
でも皆さん、住宅を購入するとき、きっと「地震に強い!」と住宅メーカーの担当者に言われて購入したはずです。まさか震度6~7の地震が襲ってきて「地震に強い」はずの我が家が壊れるなんて思ってもいないのではないでしょうか。

旧耐震基準と新耐震基準の違い

旧耐震基準と新耐震基準の差が現れる出来事がありました。1995年1月17日午前5時46分に発生した「阪神・淡路大震災」です。マグニチュードは7.3。6,434名の死者、全半壊住宅は約25万棟にもおよびました。一部損壊も加えると約64万棟もの住宅が損壊したのです。

阪神淡路大震災では約25万棟が全半壊。全壊した木造住宅

下の図は旧耐震基準で建てられた住宅と新耐震基準で造られた住宅の損壊比率です。

(出典:平成7年阪神・淡路大震災建築震災調査委員会の中間報告)

新耐震基準は旧耐震基準に比べ、確かに「大破・中・小破」の割合が減っています。基準を改定した意味が確かにあったと言えるかもしれません。しかし、新耐震基準の施行が1981年で阪神・淡路大震災の発生が1995年です。新耐震基準の住宅が造られるようになって最大で築14年。築10年以下の物件も多く存在していたのではないかと思われます。であるのに「大破・中・小破」した住宅が約25%もあるのです。

熊本地震では新耐震基準の家が全壊しています

国土交通省住宅局の「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント

上記の表は国土交通省住宅局の「熊本地震における建築物被害の原因 分析を行う委員会」報告書のポイントからですが、グラフ左の「~昭和56年5月」と書いてあるのは「旧耐震基準」の住宅を表し、「昭和56年6月~平成12年5月」は「新耐震基準」の住宅を表し、「平成12年6月~」は「新々耐震基準」の住宅を表しています。ご覧のように新耐震基準877棟のうち76棟が倒壊・崩壊し、85棟が大破しています。無傷であったのは全体のわずか179棟(20.4%)しかなかったのが事実です。さらに新々耐震基準で造られた住宅でも7棟が倒壊・崩壊し、12棟が大破しています。ハウスメーカーは「地震に強い」ことを謳い文句に住宅を販売します。ところが現実は「決して強いとは言えない」住宅が多いことを知ってください。

熊本地震では最も被害の大きかった益城町で99棟の新耐震基準で造られた住宅が全壊した

耐震等級って何?

阪神・淡路大震災でおよそ60万棟もの住宅が損壊した現実を受け、考え出されたのが、建築基準法の改正ではなく、住宅の性能表示制度を定める「品確法」によって、地震に対する建物の強度を示す指標の一つ「耐震等級」です。2000年に制定され、「新々耐震基準」とも呼ばれることもあります。建物の耐震性能によってランクが3段階に分かれており、その数字が大きければ大きいほど、建物の耐震性能が高くなります。耐震等級というのはそもそも、地震で建物が崩壊しないよう、地震に対する構造躯体の倒壊・崩壊等のしにくさを表示したものです。
建築基準法の耐震基準を満たせば「等級1」、その1.25倍なら「等級2」、1.5倍なら「等級3」となっています。耐震等級を取得した住宅は等級に応じて地震保険料の割引を受けられたりもします。

住宅性能表示制度とは2000年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」という。)」に基づく制度です。 品確法は「住宅性能表示制度」を含む、以下の3本柱で構成されています。

1.新築住宅の基本構造部分の瑕疵担保責任期間を「10年間義務化」すること
2.様々な住宅の性能をわかりやすく表示する「住宅性能表示制度」を制定すること
3.トラブルを迅速に解決するための「指定住宅紛争処理機関」を整備すること

1の「瑕疵担保期間10年の義務化」ですが、中にはあるハウスメーカーはさも独自に「10年保証」を物件に付け、それを売り物に出しているということもありました。瑕疵担保責任とは、ハウスメーカーに義務化されているもので、例えば、家屋を買ったが、シロアリがついて柱に被害があったというように、売買の目的物に隠れた瑕疵(通常では見つからない欠陥)があった場合、売主が買主に対して負う責任のことをいいます。 買主は、善意無過失(気がつかなかったことに落ち度はない)の場合に限り、損害賠償や契約の解除を求めることができます。

耐震等級3なら大丈夫?

そもそも「耐震等級3」の建物にすると、巨大災害が襲って来ても「全壊」「半壊」「一部損壊」もないのでしょうか。

国土交通省住宅局の「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント

上記の表も国土交通省住宅局の「熊本地震における建築物被害の原因 分析を行う委員会」報告書のポイントからですが、建築基準法レベル(新耐震基準=耐震等級1)では40%の建物が一部損壊以上になっているのに比べ、「耐震等級3」の建物は16棟中2棟だけに損傷があり、確かに「対地震」に関し、強くなっていると言えます。ただ、残念なのは「損傷物件」が「0棟」ではなく「2棟」あったという現実です。「2棟だけなら少ない」と思われるかもしれませんが、損壊率は12.5%です。仮に1万棟あれば1,250棟もの損壊住宅が出るということです。これは決して少ない数字ではありません。また、築後30年経っても同じ強度が保てるのか、特に木造住宅はシロアリ等の問題もあり、経年劣化による強度退化が見られるのではないかと危惧しています。

私は前述したとおり「災害に強い」基準とは「あらゆる災害から全壊・半壊だけでなく一部損壊のない『無傷』であってこそ、『強い』と言える」のではないかと思っています。
ましてや「地震」だけでなく住宅を襲う「台風」「竜巻」「土砂災害」「火災」「シロアリ」などの災害に対しても「無傷」の強さを発揮してこそ、「本当に強い住宅」と言えるのです。
残念ながら多くの災害現場の現状を見た限りでは、「耐震等級3」の住宅であっても、今後巨大化してくると言われている台風や竜巻の「最大瞬間風速50~60m/s」が襲ってきたとき、木造住宅や軽量鉄骨住宅では「無傷」であろうとは思えないうえに、土砂が襲ってきたとき、木造住宅や軽量鉄骨住宅では受け止めることができず、流されないまでも損傷は免れないものと思われるのです。

2011年つくば市を襲った竜巻によって屋根が飛ばされた軽量鉄骨住宅

では、次回から、家の間取りについて考えていきます。