防災住宅研究所

被災地調査報告

旧式瓦屋根は地震国家日本では凶器に!

山形県沖地震視察レポート 視察日2019年7月1日


鶴岡市で11センチ、秋田、新潟、輪島港で8センチの津波を観測

人的・物的被害の状況(消防庁情報:6月19日 6:00現在)

■人的被害

・負傷者…41名(山形県27名、宮城県5名、新潟県6名、秋田県2名、石川県1名)

■住家被害

・半壊…33楝(山形県10楝、新潟県 大規模半壊3棟 半壊20棟)
・一部損壊…755楝(山形県195楝、新潟県559楝、秋田県1楝)

■「ド~ン」と大きな縦揺れ後、短時間で終結が被害を少なくしたか!

新潟県は戦後、最も多くの巨大地震に見舞われている県である。

地震名 発生年月日 M 最大震度 死者 全壊 半壊
新潟地震 1964.6.16 7.5 5 26 1,960 6,640
新潟中越地震 2004.10.23 6.8 7 68 3,175 13,810
新潟中越沖地震 2007.7.16 6.8 6強 15 1,331 5,708

新潟地震の最大震度がマグニチュードが7.5という大きな数字にも関わらず「5」となっているのは、当時まだ地震計が東京都内にしかなく、そこで捉えた震度ゆえ「5」となっている。マグニチュードからして最大震度は7であったのではないかと思われる。

今回、現地調査に向かった地は新潟県村上市山北町。北部は山形県と接しており、6月18日に発生した山形県沖地震で震度6強と最も揺れ、住宅被害の多く発生した町である。
地震発生当時の状況を住民に伺うと「ド~ンという縦揺れの後、少し揺れたかという感じで、それほど長くはなかった」という返事であった。マグニチュード6.7という数字の割に死者もなく、人的・建物被害が少なかったのは、不幸中の幸いであるが、「縦揺れ」後の「横揺れ」時間の短さが被害を少なくしたものと言えそうである。
被害建物を見てみると明らかに旧耐震基準で建てられた住宅が多く、瓦屋根の損壊が大半であった。
一方、翌日震度5弱を記録した内陸部の長岡市で揺れの状況を聞いてみると「結構長く揺れていました」という返事。こちらは震源地から距離が100kmを超えていることで縦揺れはなく、長時間横揺れが続いたものと思われる。


この山形県沖地震は家屋被害等が少なかったことで、激甚災害指定は受けれないため、村上市では、市単独事業の住宅リフォーム制度の拡充を検討。市内の業者を利用して住宅をリフォームする場合に、20万円を上限に工事費の2割を補助する事業で、補助額のかさ上げなどを検討しており、国に特別交付金などの財政支援を求めていく方針としている。
とはいえ、災害発生直後は数少ない工事業者に修繕工事が集中し、価格が高騰するのが通常であり、上限の20万円を補助されたとしても残りの80万円以上は自己負担。被災住宅の地震保険加入率は不明だが、多くの被災者が自己負担を余儀なくされるのではないかと懸念される。
ともあれ、旧耐震基準建物の多いこの地域で、被害がこの程度であったことは「奇跡」であったと言ってよく、被害が少なかったことで「このままで良い」と思わないでいただきたい。
日本は世界で最も災害の多い国家。どんな災害が襲ってこようと、全壊・半壊どころか一部損壊のない「住宅」であってこそ、家族の命、そして財産を守れることを真剣に考える時に来ていると思うのだが・・・。

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