防災住宅研究所

コラム

<コラム24>危険な区域にある住宅がまとまり高台などに移っておく「防災集団移転」や「大規模広域避難」の推進も大事だが、災害で損壊しない「防災住宅」の供給に注力を!

「防災集団移転」「大規模後期避難」施策を行うことは賛成だが実際は・・・

豪雨災害などの自然災害により各地で深刻な住宅被害が続発しているのを受けて、政府が「防災集団移転」の関連法案改正に乗り出すという発表があった。これは危険な区域にある住宅がまとまり高台などに移っておく「防災集団移転」を行う場合、人員などに余裕がない市町村の委託を受け、都市再生機構(UR)が事業を代行できるようにするという内容。「防災集団移転」は市町村が実施し、費用の3/4を国が補助。
また、時を同じくして大水害の恐れがある場合に大勢の住民を遠隔地に逃がす「大規模後期避難」の円滑化に向け、政府は実施主体の市区町村を財政支援する方針を固めた、という発表があった。
この場合、台風の進路や勢力によっては予測が外れることもあり、多額の費用をかけて大規模広域避難を行った結果として空振りに終わる可能性もあり、現行では災害救助法を適用できず、財政支援ができないという問題があった。これを実際に災害が発生するかどうかもわからない段階でも災害救助法を適用できるように法改正し、費用の大半を政府が負担するという。
これら施策を行うことは賛成だが、実際実施となるとかなりの困難を伴うことが予測される。市町村や場合によっては県をまたぐ広域避難の呼びかけ、調整はどのように行うのか、予めシミュレーションを何度も行う必要性を感じる。台風時の避難であれば2日前から前日に避難が集中。交通渋滞をどのように解消するのか、また、どの規模の避難になるのかにもよるが、何万人、あるいは数十万人となった場合、それだけの人数が安全に避難できる場所があるのか心配である。大規模広域避難に従って逃げたものの、実際台風の方向が逸れて直撃しなかったことなどが続けば「オオカミ少年」のごとく信用しなくなり、住民は避難しなくなってしまう。その非難しないときなどに限って直撃し、多くの死傷者を出してしまうことも人間心理として起こりそうだ。

「逃げなくてもいい」状態を作ることも必要では?

コロナ禍という問題もあり、「在宅避難」「垂直避難」が推奨されている中にあって、大規模避難は逆行しているのではないかと思わないでもない。中には逃げたくても逃げることのできない災害弱者の方々もおり、命を守る方法として「逃げる」の逆で「逃げなくてもいい」状態を作ることも必要ではないか。
私は常々「防災住宅」の必要性を説いている。例え巨大台風が襲って来ても、強風に耐え、水害が襲って来ても流されず、停電になっても電気が使用でき、備蓄品や水も備えている「防災住宅」であったなら、避難する必要性は一気に減少する。
「防災住宅」を新築する、あるいは「防災住宅」に建て替えを行う方には補助金を出すなりして、都市を「防災住宅化」することの方が迫りくる巨大台風だけでなく、巨大地震にも耐えることができ、住民の命を確実に守ることができると思うのだが、そういう発想は政府関係者にはないのだろうか。

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