防災住宅研究所

コラム

<コラム10>令和元年台風19号関東直撃!避難レベル5「命を守る行動をとってください」、「避難所に逃げてください」の矛盾!現在の住宅工法では家族の命を守れない!『防災住宅』の拡充は急務だ!

台風15号による竜巻で大きな被害を受けた千葉県市原市永吉の住宅

台風15号に続き、またしても巨大台風が多大な被害を発生させようとしている。
台風19号が10月12日から13日にかけて関東圏から東北方面を直撃し、各地で河川が氾濫し、死者、行方不明者も多数出ている様子。時間の経過とともに死者・行方不明者の人数が増えていくことが予測され、住宅被害も15号以上にカウントされる可能性が高い。

それにしてもテレビの報道番組で繰り返される避難指示の言葉に違和感を感じているのは私だけであろうか。今年3月に制定された「避難勧告等に関するガイドラインの改定」の内容が連呼されるのだが、あまりにも無責任な内容が多すぎるのには閉口する。「警戒レベル4」が発せられると、避難勧告で「避難所に逃げてください」と連呼されるのだが、テレビ画面には対象エリアとエリア内に住む人口が表示されるが、何十万人といるのだ。その人数が本当に避難所に逃げた時、避難所に収容できると思っているのだろうか。別のコラムでも書いたが、広島市安佐北区三入地区の住人は約8000人に対し、避難所の収容人数はわずか250名で、平成30年7月豪雨災害の折に「避難勧告を出すのはいいが、責任を持てるのか」と議論になった。なんの解決も見出されないまま、報道されていることに無責任さを感じずにはいられない。

同様に「避難レベル5」が台風19号は広い範囲に発せられたが、「命を守る最善の行動をとってください」と連呼するばかり。「命を守る最善の行動」とはどういう行動なのか不明確過ぎはしないだろうか。中には具体例として「頑丈な建物に避難してください」という内容もあったが、「頑丈な建物」の考え方に個人差が出るのではないだろうかと思った。中には最近建てた木造住宅を「頑丈」と思っていないだろうか。20年以上災害現場に通ってきた私が見た現実は、木造住宅では迫り来る巨大災害に対し、決して安全ではないことを伝えておきたいと思う。「頑丈な建物」の明確な定義をすべきである。私ならば、「近くのコンクリート系建物の2階以上に逃げてください」と具体的に伝えるだろう。非常時において「命を守る最善の行動」が「コンクリート系建物の2階以上」となぜ言えないのか。「マンションに知らない人がたくさん押し寄せてきたら困る」とクレームがあったのだろうか。私は中高生向けの災害学習プログラム「防災寺子屋」で、生徒たちを引率して海岸部を歩きながら、「今、震度7の巨大地震が発生。津波の危険性があります。さぁ、どこに逃げればいいのか」を考えさせる。南海トラフ地震が発生した時、静岡県沿岸部や三重県、高知県等では地震発生からわずか数分で津波が襲ってくる可能性もあり、その時ばかりは「住居不法侵入もやむを得ない」と近くに建つ5階以上のマンションを指差し、「フェンスを乗り越えてでもあのマンションに入って、一番上の階に行きなさい」と言っている。「命を守る最善の行動」とはそういうものだと思う。勿論住人に出会った時は避難をさせていただいていることを話し、勝手に入ってきたことをお詫びするのは当たり前である。

今回の台風19号で心配されるのは「強風」による飛来物による事故や建物の損壊被害と「豪雨」による浸水、あるいは河川の決壊による被害である。台風15号の通過後、千葉県内の住宅は瓦が飛び屋根部分が損壊。ブルーシートに覆い尽くされている。よく「想定以上」という言葉を聞くが、過去の歴史を振り返ると同等あるいはそれ以上の災害が発生している現実があるのに「想定以上」はないのではないか。残念ながら現在の住宅工法では、巨大台風に対し「無傷で家族の命を守る」ことは困難な状況だ。

沖縄県は毎年のように多くの巨大台風が直撃するが、住宅被害はほとんど聞かない。それは約94%の住宅がコンクリート系で造られているからである。太平洋の海水温が高く、巨大台風の発生しやすい状況に置かれている今、住宅の価値は「どんな災害が襲ってきても住宅が損壊することなく家族の命を守ることができる防災住宅」であるべきである。

台風19号の被害状況を見るにつけ、私が提唱する「どのような巨大災害が襲ってこようとも、全壊・半壊はもちろんのこと、一部損壊もなく無傷で家族の命を守り、避難所に行くことなく電気も使え、生活のできる環境を提供する防災住宅」の普及が急務だという思いを非常に強くしている。

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