防災住宅研究所

コラム

<家を建てる人へ:その7>間取り②土砂災害の恐れがある場所に家を建てる人へ

日本は土砂災害大国・土砂災害リスクランキング

現在日本国内で土砂災害警戒区域に指定されている地域は672,419カ所。その中で最も多い県は広島県で47,706カ所が指定されています。2番目が長崎県で29,751カ所、3番目が山口県で23,885カ所、4番目 大分県22,014カ所、5番目 長野県21,409カ所。

 

ランキング 都道府県 土砂災害特別警戒区域
1 広島県 47,706カ所
2 長崎県 29,751カ所
3 山口県 23,885カ所
4 大分県 22,014カ所
5 長野県 21,409カ所
6 島根県 20,898カ所
7 熊本県 20,858カ所
8 和歌山県 20,296カ所
9 鹿児島県 19,546カ所
10 福岡県 16,590カ所

出典:001465798.pdf (mlit.go.jp) (国土交通省:全国における土砂災害警戒区域等の指定状況R3.12.31時点)

 

西日本から九州にかけて土砂災害警戒区域が多いのは、山地が花崗岩と呼ばれる岩石からできており、これが長い間、雨や風にさらされると砂のような「まさ土」に変化し、水を含むととても崩れやすくなる性質を持っているからなのです。この「まさ土」が斜面の表面を覆っているため、土石流や崖崩れが起こりやすくなっています。

2021年8月14日広島市西区田方で発生した土砂災害

土砂災害の恐れがあるエリアと注意点

近年の激しさを増す線状降水帯を伴ったゲリラ豪雨や集中豪雨によって毎年のように土砂災害は発生をしています。現在は土地を販売する側にも土地の災害リスクを伝える義務化がされていますが、それ以前に「おっ、この土地は安い!」と思って買っていた土地が土砂災害警戒区域だったということもありますので、各自治体が出しているハザードマップで土砂災害警戒区域などを確認しておくことをお勧めします。

全国のハザードマップはこちらからも見られます。「ハザードマップポータルサイト」
https://disaportal.gsi.go.jp

もし、その土地自体が土砂災害警戒区域でなくても、写真のように土砂はかなりの破壊力を持って低い地域にまで流れてきます。購入土地の高いエリアに土砂災害警戒区域などがある場合も注意が必要です。
防災住宅研究所では、無料で土砂災害のリスク診断を行っています。
お気軽にお問合せください。

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土石流が襲って来ても流されない家とは?広島土砂災害の教訓

多くの土砂災害現場を調査してきた中で、土砂災害に「強い」住宅があることがわかりました。その住宅とは「鉄筋コンクリート造」であるということです。

2014年8月20日広島市安佐南区八木で発生した土砂災害を鉄筋コンクリート造の県営アパートが受け止めていた

写真は2014年8月20日広島市安佐南八木で最も被害のひどかった地区のすぐ横ですが、3階建の鉄筋コンクリート造の県営アパートが土砂災害発生現場から近く、多くの土砂を受け止めてくれていたことで、この下の地域は被害が少なくて済んでいます。

2014年8月20日広島市土砂災害で最も被害の大きかった安佐南区八木3丁目で2mもの土砂を受け止めていた壁式鉄筋コンクリートパネル組立造(WPC工法)の住宅

この写真は最も被害の大きかった八木3丁目で2mもの土砂を受けながらも流されなかったことで下の地域も流されず被害が少なくて済んでいます。これはWPC工法と呼ばれる壁式鉄筋コンクリートパネル組立造で造られた住宅で、県営アパートと同様、鉄筋コンクリートで造られているため重量があり、土砂を受け止められるだけの強度を壁も持っているため、土砂を受け止めることが出来たものと思われます。
残念ながら、この住宅の西側にあったエリアは下の写真のように土砂で覆いつくされています。ここには木造住宅、鉄骨系住宅が存在していたのです。

土石流によって多くの木造住宅、鉄骨系住宅が流された

土砂を受けた山側が大破した木造住宅(2014年広島土砂災害 広島市安佐南区八木)

土石流が襲って来ても流されない家とは?熱海土石流の教訓

2021年7月3日熱海市で発生した土石流でも残ったのは鉄筋コンクリート造の建物だった

この写真は2021年7月3日熱海市で発生した土石流で残った住宅を調査するために訪れた時(8月29日撮影)のものですが、ご覧のように土石流が直撃した地域で残っているのは鉄筋コンクリート造の建物です。

土砂災害のリスクがある場合の工法・間取り・備え

もし土砂災害警戒区域などで家を建てる必要があるときには、次の3つをお勧めします。
① 鉄筋コンクリート造の建物にする。
② 山側部分の開口部は最低限とし、谷側に玄関や開口部を大きくする。
③ 2階の谷側の部屋に非常時用備蓄品などを用意する。

①鉄筋コンクリート造の建物にする。
鉄筋コンクリート造の建物にするという理由は前述したとおり、「重量がある」「鉄筋コンクリート造の壁も強い」ことで土石流を受け止めることが出来るためです。

②山側部分の開口部は最低限とし、谷側に玄関や開口部を大きくする。
当然のことながら、土砂が流れ出てくるのは山からです。この山側に開口部があった場合、開口部を突き破って土砂が室内に入ってきます。山側に開口部がなければ、土砂が入ってくることもありません。

③2階の谷側の部屋に非常時用備蓄品などを用意する。
1階部分と2階山側の部屋は土砂に襲われてしまっていますが、谷側の部屋は襲い来る土砂から逃れ、被災後も使用できる確率が高くなっています。夜中の急な集中豪雨によって土砂災害発生の危険性が高まり、避難が困難な場合は、2階の谷側の部屋に避難することをお勧めします。この時、懐中電灯や非常時用備蓄品があれば、救助が来るまで状況の確認や状況に応じた対応が出来るのではないかと思われます。

土砂災害のリスクがある場合の工法・間取り・備え

2021年の防災グッズ大賞建築部門で大賞を受賞した(一社)防災住宅研究所と百年住宅グループが造った「防災住宅」にはこれらの①②③を取り入れていますので、是非参考にしていただければと願っています。

「防災住宅とは」のページはこちら

東京大学と海洋開発研究機構が2017年に現在の温暖化の状況をスーパーコンピュータに入れ、今後襲って来る台風を演算したところ、台風の数は減るものの巨大化し、雨量も多くなるという結果が出ています。雨量が増えることで、これまで以上の土砂災害などのリスクは高まります。

家を建てる時の心構えとして、「災害は必ず襲って来る!」という想定で、家選び・間取りを考えることが重要であることは間違いありません。

浸水リスクがある方はこちらをご覧ください

<家を建てる人へ:その8>間取り③浸水のリスクがある土地を選んでしまった方へ

津波のリスクがあるエリアの方はこちら

<家を建てる人へ:その9>間取り④津波から命を守るためにできること

上記の災害のリスクのないエリアの方は、こちらを参考にされてください

<家を建てる人へ:その10>後悔しない住宅設備 10選

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