防災住宅研究所

コラム

<家を建てる人へ:その8>間取り③浸水のリスクがある土地を選んでしまった方へ

あなたの家の浸水リスクは?

日本には河川数がどのくらい存在しているのかご存じでしょうか。一級河川(一級水系に係る河川のうち河川法による管理を行う必要があり、国土交通大臣が指定「区間を限定」した河川が「一級河川」です)は水系が109あり、河川数は14,066。二級河川(一級水系以外の水系で公共の利害に重要な関係があるものに係る河川で、河川法による管理を行う必要があり、都道府県知事が指定「区間を限定」した河川です)になると水系は2,710、河川数は7,085本にも上ります。

出典:河川整備基本方針・河川整備計画の策定状況 – 国土交通省水管理・国土保全局(mlit.go.jp)

上図を見てもわかるように、日本全国山地(山脈)から平野部に河川が伸び、豊かな水の恩恵によって農作物が生産され、私たちの生活を豊かにしてくれています。
しかし一方で「河川の氾濫」という災害リスクは常について回るのが日本でもあるのです。
令和3年3月31日に発表された国土交通省の水害統計調査から令和元年の水害(水害統計調査 令和元年水害統計調査 令和元年の水害被害 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp)を見ると、この年だけでも40件の河川の氾濫があり、死者・行方不明者126人、全壊・流失3,379棟、半壊17,796棟、床上浸水27,792棟、床下浸水50,414棟の被害が発生しています。
新しく「我が家」を建てる時、日本はこの「浸水リスク」対策を抜きにして建築してしてはいけません。
防災住宅研究所では、選んだ土地の災害リスクについて無料相談を行っています。

どのくらい浸水リスクがあるかなど、詳しく知りたい方は問い合わせフォームよりご連絡ください。

お問い合わせはこちらから

浸水エリアの方にオススメ!間取りの工夫

建設予定地が過去何度か床下浸水があったような地域ならば、地盤に盛土をすることをお勧めします。写真の住宅は広島県安芸郡坂町に建てられた「防災住宅」ですが、この地は海岸線から近く、海水が入ってくる水路があることで、何年かに一度大潮の時に海水が水路からあふれ、住宅地まで達するということがありました。


そこで地盤を50cm盛土し、ボーリング式地盤調査の結果、コンクリート柱を地中に埋め込む地盤改良を行っています。


またこの地は2019年7月豪雨によって土砂災害が発生、多くの住宅が流され、河川の氾濫によって氾濫水が180cm近くに達し、多くの住宅の1階部分が水没しています。


そのため、この「防災住宅」では、コンセント位置を床面から150cmに設置し、盛土と併せると地盤から200cmの位置にコンセントがあり、例え同様の180cmの氾濫水に襲われても、コンセントは使用できるようになっています。

垂直避難ができる家とできない家がある

自治体のハザードマップ等で、もし自分の選んでしまった土地が「浸水のリスクがある土地」だったら、どのような家を建てたらよいのでしょうか。
ここ数年は新型コロナウイルス感染症の感染対策という面でも、災害発生時に避難所に行くことが懸念され、自宅の上階に避難する「垂直避難」がスポットを浴びています。ただ、この「垂直避難」ができる家であるには、大きな条件があることを知ってください。
下の写真は2015年9月10日関東・東北地方を襲った豪雨によって鬼怒川の堤防が決壊し、その翌日の11日に決壊現場近くの被害住宅を撮影したものですが2階建て木造住宅が傾いてしまっています。常総市の約1/3が浸水するという状況で、浸水が解消されるまで10日間を要しています。

2015年9月10日茨城県常総市の鬼怒川堤防が決壊。水流によって損壊し傾いた木造住宅

 

2019年10月13日台風19号によって長野市の千曲川が氾濫。基礎を残して流された住宅

上の写真は2019年10月13日、関東圏から長野県に大きな被害を残した台風19号によって長野市の千曲川が氾濫し、多くの住宅被害を発生させたときのものです。基礎だけを残して、住宅の建屋が流されてしまっています。
言わずもがなですが、このように流され、損壊してしまうような住宅の2階に「垂直避難」をしてしまっては、命の危険にさらされてしまいます。すなわち「垂直避難」が出来る住宅の条件とは、河川が決壊し襲って来る水流に対しても「流されない」「損壊しない」住宅であることです。
これまで防災住宅研究所が多くの災害現場を調査してきた中で、津波や河川決壊の激しい水流にも流されず、耐えることのできる住宅は「重量がある」「壁面が強固」という条件が必要だということがわかりました。
東日本大震災のあの巨大津波の中でも「構造躯体の損壊なし」「流失なし」という住宅工法があったのです。

次回は、その津波にも流されなかった住宅工法と、その住宅工法だからできる巨大津波から「命を守る」方法をご紹介します。

<家を建てる人へ:その9>間取り④津波から命を守るためにできること

上記の災害のリスクのないエリアの方は、こちらを参考にされてください

<家を建てる人へ:その10>後悔しない住宅設備 10選

研究所概要