防災住宅研究所

コラム

<コラム3>あらゆる災害から家族を守る…7勝0敗完全勝利を!

私は30歳まで広島市内で生まれ育ったことで、当然のことながらプロ野球は広島東洋カープの大ファンです。1975年の球団創立25年でようやくたどり着いたセ・リーグ優勝の時には、広島県民はうれし涙に目をはらしたものです。

そのカープは2016年から球団史上初の三連覇! 弱き時代を知るオールドファンとしてはたまらない時空を過ごさせていただいていると実感しています。

さてさて、カープを前置きで使いましたが、大好きなカープが接戦を制し7対6で勝ったとしたら「さすがカープじゃ! 今日のゲームは面白かったのぉ」と祝杯の一つでもあげるところですが、いざ「対災害」となると全く話が違ってきます。

住宅を襲う災害には、地震(津波)、台風、ゲリラ豪雨、土砂災害、竜巻、火災に加え、シロアリも入れてもいいかもしれません。これら7つが我が家を襲ってきたとき、7勝0敗完全勝利を収めなければ、大変なことになるのです。

「完全勝利」を何故納めなければならないのか。前述した7対6という点数のように6点も獲られてしまうと、莫大な修繕費が必要になってしまうのです。「対災害」において負け試合は「全壊」もしくは「半壊」以上のことで、点数を取られる=一部損壊と考えられ、数十万円~数百万円に及ぶこともあるのです。

私は調査のため熊本地震後、熊本市内に住んだりもしましたが、全半壊約4万棟、一部損壊約16万棟にも及んだ被害に対し、修繕ができる大工や職人さんの人数が少なく、修繕費が高騰。2~3割程度の高騰なら理解ができるところですが、実態は2~3倍もの修繕費に跳ね上がってしまっていたのです。

2013年の損害保険協会のデータによると、熊本県内の火災保険加入率は44.98%、地震保険加入者は27.3%でしかなく、2016年の熊本地震発生時には7割以上の方が地震保険に入っておらず、修繕費を自費負担した方も多いのです。ましてや保険会社の修繕見積もりと、実際の修繕費には価格高騰によって差ができ、自己負担を余儀なくされた方も少なくないのです。

さらに火災・風水害・地震等によって被害をうけると市町村が現地調査を行い、全壊・大規模半壊・半壊・一部損壊・全焼・半焼・床上浸水・床下浸水・流出などの区分で被害の程度を認定した「罹災証明書」が発行され、それに応じて被災者生活再建支援金災害復興住宅融資などの被災者支援制度の適用を受けることができ、損害保険の請求などを行うようになりますが、現在の被災者生活支援制度では一部損壊に対し支援金はまったく支払われません。住宅の被害程度に応じて支給する支援金を基礎支援金と言い、支給額は全壊家屋で100万円、大規模半壊家屋で50万円となっています。さらに住宅の再建に応じて支給する加算支援金と呼ばれる支援金があり、こちらは新たに住宅を建築・購入する場合に200万円、補修する場合に100万円となっています。熊本地震の場合、半壊に対しても仮設住宅に入らずに修理して住み続けることを条件に応急修理費として57万6千円が支給されましたが、前述したように修繕費は高騰。持ち出しを余儀なくされる方も多くいらっしゃったのも事実です。

熊本地震ではあまりにも一部損壊が多く、自治体によっては修繕費の1部負担をしてくれたところや、商品券を配ったところもありましたが、一部損壊による修繕費は通常出ないのです。

先日、ある木造住宅メーカーのホームページを見て驚いたことがあります。上図は最も被害の大きかった益城町を中心とした調査ですが、この「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書概要」の学会悉皆調査結果による木造の建築時期別の被害状況(図3)を引き合いに出し、「1981年6月以降の新耐震基準で造られた877棟の木造住宅の中で、全壊したのはわずか76棟しかなく、中破以下のわずかな損傷は61.2%、無被害も179棟20.4%もあるのです」と書いているではないですか! 数字の大きな方を出して、「決して木造住宅は弱くない」とアピールしたいのでしょうが、新耐震基準でありながら木造住宅の損傷のあった79.6%の方々は建替え、修繕を余儀なくされている事実をどう受け止めるのでしょうか。

「自然災害だから仕方がない・・・」と住人は泣き寝入りでしょうか。住宅メーカーに責任はないのでしょうか。

このデータ内に私が推奨するWPC(Wall Precast Concrete)工法の住宅データがないのは残念ですが、私ももちろん現地で確認しましたが震度7が2度襲い最も被害の大きかった益城町宮園にあったWPC工法の住宅は全く損傷もなく「無傷」でした。熊本県内にその住宅メーカーのWPC工法の住宅は23棟ありましたが、どの住宅も「無傷」で、住宅の修繕費を支払うことは一切なかったのです。 対災害に対する住宅の勝率は100%でなければいけないことをお分かりいただけましたでしょうか。7勝0敗完全勝利!災害大国日本の住宅は完全勝利のできる「防災住宅」でなければいけません!

防災住宅研究所ではYouTubeにて災害体験や、災害現場レポートなどの動画を公開しています。

YouTube動画は以下のリンクよりご視聴いただけます。

研究所概要