<コラム2>防災(防災士)の専門家と呼ばれる人がたくさんいても、何故か声高に叫ばれない「住宅が一番大事」!
2019年3月末時点で「防災士」と呼ばれる方は170,756人が認証されているそうです。防災士とは”自助”“共助”“協働”を原則として、社会の様々な場で防災力を高める活動が期待され、 そのための十分な意識と一定の知識・技能を修得したことを日本防災士機構が認証した人を言います。その他「防災」「社団法人」というキーワードで検索してみると、多くの防災関連社団法人が名を連ねています。
防災士に期待される役割として、平常時の活動と被災時の活動に分かれますが、平常時の活動として、まず自分と家族の命を守るために、「我が家の耐震補強」「家具固定」「備蓄」などを進めます。と書かれています。これらも大事なことですが、最も大事なことが抜け落ちている、そう思うのです。下の図は、2000年に発表された阪神淡路大震災の死亡原因を表したものです。
表からもわかるように死亡原因の第1位は「窒息・圧死」となっています。これは当時自分が住んでいた住宅の倒壊によって、下敷きとなり亡くなった方が最も多かったわけですが、その対策が「我が家の耐震補強」だけで十分なのでしょうか。最も大事なことが抜け落ちていると前述しましたが、あの震度7の巨大地震の中、全壊・半壊どころか一部損壊もなく、家族の命を守った住宅があったことをご存知でしょうか。「耐震補強」の前に、どのような住宅が巨大地震の前に無力で壊れ、多くの命を奪ったのか。一方、どのような住宅が一部損壊さえすることもなく家族の命を守ったのかを明確にし、このような住宅に住むことが平常時の活動として最も大切だということを最初に伝えるべきだと思っています。
この文章に目を通されている皆さんもそうだと思いますが、阪神淡路大震災の被災地域に建っていた、ある建築工法だけが全壊どころか半壊もないだけでなく、一部損壊もない「無傷」で建っていたことをご存知でしょうか?
その工法とはWPC工法と呼ばれるもので、Wall(壁式に)Precast(あらかじめ作る)Concrete(コンクリート)の頭文字をとってWPC工法と呼ばれるもので、工場内であらかじめ作ったPC(プレキャストコンクリート)パネルを、建築現場に運び、箱型に組み立てる工法で、この工法で建てられた495棟は阪神淡路大震災の激震の中にあって、全くの無傷で、当然のことながら住む家族の命をしっかりと守りぬいたのです(建設省建築研究所:監修 建築技術 特集―阪神淡路大震災 コンクリート系低層プレハブ住宅の被害より)。
このWPC工法で立てられた住宅は、その後の新潟中越地震、能登半島地震、新潟中越沖地震、2度の震度7が襲ったことで新耐震基準の木造住宅99棟が全壊した熊本地震に遭っても(平成28年(2016年)熊本地震建築物被害調査報告(速報)より)、このWPC住宅は「無傷」(百年住宅グループ 熊本県内23棟)だったのですから、凄いというほかありません。
なぜそこまで地震に対して強いのかは別の項でしっかりとご紹介しますが、過去の災害において「無傷」の実績があるWPC住宅に住むことこそ、平常時にできる家族の命を守る第1の条件ではないかと思いっています。もし、阪神淡路大震災で全壊し家族の命を奪った住宅がこのWPC住宅であったならば、4,400人近い命が助かっていたのです。熊本地震でも震度7が2度襲い、震災直後に49名の方がお亡くなりになっていらっしゃいますが、そのうち32名の方が住宅の下敷きになって窒息・圧死で亡くなっています。WPC住宅でしたら一部損壊もないのです。32名の命が助かっていた・・・これは防災上、大変なことなのです。
毎年、90数万戸の新築が建てられています(住宅着工統計:国土交通省)。10年で900万戸です。ここに住む家族が平均4人とすると、巨大地震が襲ってきたとしても3600万人の命が、他の住宅工法に住むよりもかなり高い確率で助かるといえるのです。
災害現場に足を運ぶとどのような工法の住宅が損壊しているのか明白です。倒壊した多くの住宅写真や映像を調査研究のために残しています。大半の住宅メーカーが「わが社の住宅は地震に強い!」と言って販売をしていますが、「強い」という言葉に明確な基準を作りましょう。「阪神淡路大震災以降の巨大地震に遭って、全壊・半壊どころか、一部損壊もない住宅だけ強いと言って良い」と!
私が調査した内容では、本当に「強い」と呼べるのは「WPC工法」の住宅しかないことを知っていただきたいと思います。 防災士の方々も、災害から家族の命を守る第1は「家だ」ということを是非知ってください。
防災住宅研究所ではYouTubeにて災害体験や、災害現場レポートなどの動画を公開しています。
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