防災住宅研究所

被災地調査報告

床下浸水のない地熱利用強化基礎工法に注目

水害に見舞われた武雄市の住宅

ここ数年、毎年のように水害に見舞われる九州。一昨年、福岡県朝倉市を襲った水害の傷跡が癒えぬ前に、またしても水害に襲われた。

今年も8月後半に九州北部を襲った記録的大雨によって水害の傷跡が残った。最も大きな被害を受けたのは佐賀県。8月28日未明、線状降水帯による猛烈な雨で佐賀市では1時間に110.0mmの降水量を記録。県内で約2500棟もの床上・床下浸水が確認された上に、武雄市では3名の方が亡くなり、長崎自動車道の武雄ジャンクション付近で路面が隆起し、下りの武雄北方インターチェンジから嬉野インターチェンジまでが通行止めになったりもしていた。

さらに鉄工所から約5万リットルの油が流出。農地を襲ったことで、復旧だけでなく保証も大きな問題となりそうだ。

鉄工所から漏れた油の処理に追われる自衛隊の方々

鉄工所から漏れた油の処理に追われる自衛隊の方々

私が武雄市の現地を視察したのは9月3日。一帯を襲った水はすでに引いていたが、車が通るたびに土埃が舞い上がる状態。北方小学校や中学校グラウンドは、床上浸水で使用できなくなった畳や家電製品がうず高く積まれ、異臭を放っていた。通学路を小学生が「こんにちは」と大きな声を出して通学している姿には、何かホッとするような気がした。

北方小学校のグラウンドには畳や使えなくなった家電製品が積み上げられ、異臭を放っている

北方小学校のグラウンドには畳や使えなくなった家電製品が積み上げられ、異臭を放っている

住宅の壁には襲った水が残したラインが残る。被災した方に話しを伺ってみると「30年前にも今回と同じ程度の床上浸水に見舞われたが、前回は早く水が引いたが今回はなかなか引かなかったことで被害を大きくしたのではないか」と30度を超える暑さの中、自宅の復旧に疲れた顔をしながら答えてくれた。

昨年広島や岡山を襲った平成30年7月豪雨の時もそうであったが、住宅が床上浸水などの水害に襲われると、復旧まで1ヶ月以上を要す。特に床下の汚泥を取り除く作業が重労働の上、水できれいに流し、乾かし、消毒し、畳を取り替え、元通りにしたようでも「臭い」が残る。さらに水に長時間浸かった柱や床板などは腐りやすく、強度の低下も避けられない。この状況の中、巨大地震がこの地を襲えば、倒壊家屋が増えることが予測される。

私は水害の可能性がある地域の方々がもし、住宅を建て直す、新築を行うのであれば、床下のない「地熱利用強化基礎工法」をお勧めしたい。この工法は床下がないため、たとえ床上浸水した場合でも畳を剥ぎ、床板を外し、床下を掃除する必要が一切ない。なおかつ、冬暖かく、夏に涼しいという環境を整えてくれると言うのだから、一挙両得である。

水害時に威力を発揮した「地熱利用強化基礎工法」

水害時に威力を発揮した「地熱利用強化基礎工法」

ここ、佐賀県武雄市は約30年前にも水害に見舞われたと言う。武雄市に限らず、災害は繰り返し襲ってくることを知っておかなければいけない。地震然り、台風然り、水害然り。我が身を守るためには、どのような地に住んでいるのかを知り、敵(災害)を知ることで家族を守ることができる。その第一条件がどんな災害にも「強さ」を発揮する「防災住宅」しかないことを知っていただきたい。

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