防災住宅研究所

被災地調査報告

現状の住宅工法では風速50m/sに耐えられるのか?!

「沖縄県」は台風が直撃する回数が他県よりも多いことはご存知の通り。平均で言えば他県の倍近い直撃回数があるまさに台風の通り道であるにも関わらず、「住宅被害」がニュースになることはほとんどないことをご存知だろうか。
その理由は住宅工法にある。沖縄県内の住宅は94%が鉄筋コンクリート造でできており、「対台風」を想定した家造りであることは間違いない。

この台風15号は最大瞬間風速が55メートルを超えるほどの強風を持って襲ったことで千葉県内で4万棟もの被害を発生させたが、その大半が屋根瓦が飛ばされた損傷が多い。瓦を製造し、生活の糧にされている方には申し訳ないが、私は災害時の安全性を考えた時、「屋根瓦」と「ブロック塀」は廃止すべきだと思っている。

「屋根瓦」は風速40メートルを超えるような強風で襲われると、屋根から剥がされ、飛ばされ、瞬時にして凶器に変貌する可能性が大である。1993年に西日本に大きな被害をもたらした台風19号では、飛散した屋根瓦が走行中の車のガラスに当たり、破壊したケースが何件もあり、道端に放置された車を何台も見たものである。加えて震度6を超える地震が襲ってきた場合、瓦が落ち、通行人の頭を直撃することも予測される。

「ブロック塀」も同様に巨大地震が発生すると倒壊する可能性が高く、熊本地震の際も、倒壊したブロック塀で道を遮られ、通行できない道路を確認している。昨年だったか、大阪で通行途中の小学生をブロック塀が襲い、女の子が亡くなった記憶は新しい。

毎年のように台風は襲ってくる。毎年のように大雨を降らせ、土砂災害を引き起こし、住宅を損壊させ、住民の命を奪っている。時に強風を伴い、屋根瓦を飛ばし、住宅までも損壊させる。

これだけ毎年のように台風によって被害にあっているのに、対策がなさ過ぎはしないか。私は常々災害対策の第1は「どのような災害が襲ってきても全半壊どころか一部損壊もなく、被災後も避難所に行くことなく自宅で生活のできる防災住宅であること」を提唱しているが、もっと真剣に「対災害は住宅でできる」ことを考えて欲しいと思う。

ところで写真はゴルフ練習場のポールが倒れ、住宅を直撃した千葉県市原市の現場である。私は9月10日に現地を訪れたが、改めて災害は人間の想像を大きく超えることを思い知らされた。強風によってゴルフ練習場の40メートルを超えるポールが基礎から剥がされ、我が家を直撃することなんて、住人は考えもしなかったようだ。住民の方に話を聞くと、この地は23年前に開発された住宅地で、皆さんほぼ同じ時期に入居されたようで、これまでの期間でゴルフ練習場のポールが20メートル付近で継がれて40メートル近くになっているようだ。

住宅を直撃したゴルフ練習場のポール

その後の報道では、ゴルフ練習場側についた弁護士から「これは自然災害で発生したもので、住宅の修理の保証はしない」と連絡があったとか。しかし、現地調査してみると、ポールが倒れたことで跳ね上がった基礎を見てみると片側は基礎杭は打たれておらず、コンクリートで固めていただけのように見受けられる。跳ね上がった方の基礎強度を上げていれば、もしかしたらポールは倒れていなかったのでは・・・と思えなくもない。人災の可能性も否定できないのではないか。第三者の建築専門家の調査を期待したい。

40メートルを超えるポールが基礎から剥がされている
今回の強風によって、鉄塔も数カ所で倒れ、木々も倒壊し電線等を切断したりで千葉県内では1週間を超えて停電が続いている。現代社会は「停電」に非常に弱い。35度を超える気温に高い湿度。冷房のない環境では、熱中症になりかねない。水洗トイレは使用できず、上下水道も使えない。災害時の避難所もそうだが、歯も磨けず、顔も洗えず、お風呂にも入れない当たり前のことができない生活はストレスとなり、健常者でも体調を崩しかねない。「電気のありがたさ」が嫌と言うほど骨身にしみる。

私が提唱する「WPC工法の防災住宅」は我が家に発電機が常備してあり、1部屋は災害時対応電気配線部屋にしていることで、電気が使用できる。家族人数×3リットル×1週間分の水の確保はもちろんのこと、災害時非常用トイレや食料も常備されているので、避難所に行くこともない。

国は早目の避難を提唱しているが、我が家が最も安全であるならば「逃げなくてもいい」選択があってもいいのではと思っている。

「巨大災害から家族の命を守るのは“防災住宅”」だということをもっともっと伝えなければいけないと強く思う。

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