防災住宅研究所

令和6年能登半島地震の現地調査報告

令和6年能登半島地震の現地調査報告

2024.1.11~14

令和6年能登半島地震/木造住宅の下敷きで多数の死者。このままでいいのか!

 

■マンホールが1m飛び出た珠洲市宝立町鵜飼

■鵜飼橋に40cm近い段差ができでいた珠洲市宝立町鵜飼

■液状化被害が出た羽咋市

■珠洲市正院町

■津波による被害も多かった珠洲市宝立町鵜飼

■倒壊した大手鉄骨系メーカーの住宅輪島市山岸交差点

■輪島市朝一周辺

■輪島市朝市火災現場

視察場所 :   1月12日 石川県珠洲市 ~ 能登町

1月13日 石川県輪島市朝市付近

1月14日 石川県輪島市門前町付近

発生日時 : 令和6年1月1日 午後4時10分

最大震度 : <石川県>

震度7   志賀町

震度6強 七尾市、輪島市、珠洲市、穴水町

震度6弱 中能登町、能登町

震度5強 金沢市、小松市、加賀市、羽咋市、かほく市、能美市、 宝達志水町

<新潟県>

震度6弱 長岡市

震度5強 新潟中央区、新潟南区、新潟西区、新潟西蒲区、三条市、 柏崎市、見附市、燕市、糸魚川市、妙高市、上越市、佐渡市、 南魚沼市、阿賀町、刈羽村

<富山県>

震度5強 富山市、高岡市、氷見市、小矢部市、南砺市、射水市、舟橋村

<福井県>

震度5強 あわら市

地震規模 :   M7.6

■震源の深さ:   16km

■地震活動 :   1 月 1 日 16:06 の最大震度 5 強の地震以降、1 月 17 日 06 時 00分現在、震度 1 以上を 観測した地震が 1431 回(震度 7:1 回、震度6 強:0 回、震度 6 弱:1 回、震度 5 強:7 回、震度 5 弱:8 回、震度 4:41 回、震度 3:152 回、震度 2:380 回、震度 1:841 回)

■現地調査 : (一社)防災住宅研究所 児玉

■人的・住家被害等の状況(消防庁情報:1 月 17 日 9:00 現在)

■調査内容

・構造別倒壊、全壊、半壊住宅の損壊箇所とその状況

・WPC住宅の状況

■現場状況

わずか7か月後、石川県珠洲市の同じ被災地調査の場に立つとは、思ってもみなかった。

昨年5月5日に石川県珠洲市で震度6強が発生、600棟以上の住宅が損壊した矢先に、今回再び珠洲市に6強が襲った。

この地は2022年6月19日にも6弱に襲われている。

今回の地震はマグニチュード7.6と直下型地震の規模としては非常に大きい。(阪神淡路大震災のマグニチュードは7.3。)能登半島全体に被害は拡大し、多くの道路を破壊、土砂災害が道路を寸断したことで、緊急消防援助隊なども指示を受けた被災地に到着した部隊はわずかしかなく、救助が進まない状況が続いている。

さて、住宅である。度重なる地震は、ボディブローにように住宅の接合部や基礎にダメージを与えていたかもしれない。中でも新耐震基準が制定された昭和56年6月以前に建てられた木造住宅が多く、わずか数秒で倒壊した可能性が高い。強い外力が柱と梁の接合部に集中し、破損。中には柱が引きちぎられたように破断していたものもあった。

1月12日に珠洲市、13日に輪島市を調査したが、中には新耐震基準で造られた住宅、木造だけでなく鉄骨系住宅も倒壊していた住宅も発見した。石川県内の損壊住宅は4万軒を越えたそうだが、倒壊は免れたが、全壊住宅も多く、一部損壊レベルになると数限りない。

この地域に新耐震基準前に造られた住宅が多いのは、後継者が都会に働きに出たりしたため、持ち家のリフォームや建て替えを行わなかったという経緯がある。倒壊住宅は築50年を超えたものが多く、全国にまだ1200万軒もあるこれらの古い住宅の耐震化がもとめられるが、新耐震基準の住宅も多数損壊しているだけに、住宅工法自体を根本的に見直すところに来ているのではないかと思う。

巨大災害に対して、やはり木造住宅や鉄骨系住宅で家族の命を守るには限界があるのではないか、そう思わずにいられない。どの住宅メーカーも「災害に強い」と言って住宅を販売するが「強い」に対する規定は何もない。防災住宅研究所では、何十年にわたって、あらゆる災害から全壊半壊どころか一部損壊もなく、被災後も避難所に行くことなく家族の生活を確保してこそ「災害に強い」と言えるのではないかと規定しているが、そのような住宅は長年被災地を調査しているが、WPC工法の住宅を置いてほかにはないようである。木造住宅や鉄骨系住宅も確かに建築当初は災害に耐えられるだけの強度を持っているかもしれないが、シロアリや腐朽菌、経年劣化によって次第に「耐力」は落ちてくる。今や人生100年と言われる時代である。20年、30年どころか、50年、100年もの長期にわたって家族の命を守ってこそ、「災害に強い」と言えるのではないだろうか。

日本は世界で稀に見る災害大国となっている。その災害大国でありながら、災害に襲われるたびに「損壊」してしまうような住宅ばかりであると危険でしょうがない。

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